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早朝の庭で [エッセイ]

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最近は早起きだ。
恥ずかしい話だが、腰を痛めてしまいキャンプに行けない日々が続いている。
新しく買ったナイフや、一度しか乗っていないカヤックをひっぱり出しフィールド
へ向かいたいし、よく行くキャンプ場周辺の山々の林道へもバイクで行きたいという
思いがつのる。

今日はいい天気だ。
雲一つない青空が広がっていると、よけいにうらめしい気持ちになる。
ベットから腰に気を使いながら起き上がると、あれこれ考えてみた。
買ったばかりのネイチャーストーブを庭で使いたいし、焚き付けを作るのにナイフを
試せるな。まだ初夏とはいえ、朝5時の気温は肌寒い。こんな朝はたき火でも楽しみ
ながらスベアでコーヒーでも湧かして飲みたい。
そういえば我家の庭には枯れ木が一本、他の木が碧く生い茂る生命の季節を謳歌して
いる中、淋しげに棒にでも変化したかのように立っている。
そのまわりには、ちょっとした枝がそこかしこに落ちていたはずだ。

階段を降り、玄関脇の倉庫を開けると木製の小さいテーブルがひとつ、折りたたみの
椅子が一脚。そいつを庭に広げ、スベアとパーコレーターを用意した。
小さな庭の枯れ木のまわりには、まめで綺麗好きすぎる妻がきっちりと掃除や庭整備を
行っていて、すでに燃やせる枯れ木などなかった。あきらめきれずに枯れ木にしがみ
つくように細く伸びた小枝を手で折って見る。
パキパキといかにもすぐにでも燃えそうな水分もない風体で折れて行く。
しかし、とてもとてもたき火にした所ですぐにでも燃え尽きてしまいそうな量で、
試すという迄もいかない量と、細さでしかなかった。

ひとつため息をつきながら、テーブルの上に使い道を失ったナイフを置き、ケースから
スベアを取り出す。ガソリンストーブはプレヒートが必要だ。
ホワイトガソリンをスベアのくぼみに注ぎ、火をつけると勢い良く小さなストーブが
燃える。ある程度炎が小さくゆらめくようになってから、ゴトクのケースをかぶせ、
点火すると気温もあいまって勢いよい独特と音を立て、青白い炎をあげて点火した。
パーコレーターをスベアの上に乗せ、煙草に火を付けた。

早朝の少し冷めた空気と、ひしめき合う住宅街の狭い庭から見上げる空。
それぞれの屋根の下ではまだ寝ているのか、それとも朝の忙しい喧噪が個々はじまって
いるのか。それにしても今日の空は青い。
都会の中とは言え、木々が生い茂る住宅街の環境の中、自分家の庭でこうしていると
鳥のさえずりや朝独特の空気感が漂っている。
行っている事はキャンプ場の朝となんら変わりがないわけなのだから、後は眼に映る
物に閉塞感を伴うくらいだ。
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パーコレーター独特のコーヒーの甘い匂いが漂い、スベアの盛大な燃焼音が安定して
くると、コーヒーに変化した水がパーコレーター上部のノブから跳ね上がる。
もう出来てしまったか、と少し残念に思うのは何故だろう?
過程を楽しむのがアウトドアならば、目的としてコーヒーを飲むという楽しみは?

コーヒーをカップに注ぎ、もう一本煙草に火をつけた。
スベアの音が消えた世界は静寂だ。
耳をくすぐる鳥のさえずりと、時間の経過とともに少しずつ上昇する空気の温度。
目を閉じてみるとまるでキャンプ場にいるような錯覚を覚える。
閉鎖された自然空間という感じの庭の中で、もう一度高い空を見上げた。
そういえばあの空は地球のどこにでもつながっているのだ。
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